親が元気なうちは、実家を相続する日を具体的に考える人は、それほど多くありません。
「まだ先の話だろう。」
そう思っていても、その日はある日突然やってきます。
葬儀や法要を終え、少し気持ちが落ち着き始めたころから、現実的な問題が次々と目の前に現れます。
銀行口座の手続き、年金や保険、公共料金の名義変更など、やるべきことは数多くあります。
その中で、後回しになりがちなのが「実家」の問題です。
地方では、子どもが進学や就職をきっかけに都会へ移り、そのまま家庭を持つというケースが珍しくありません。
親は長年住み慣れた実家で暮らし、子どもは遠く離れた場所で生活する。
そんな家庭は今ではごく普通の風景になっています。
そのため、親が亡くなると、都会で暮らす子どもが地方の実家を相続するという状況が全国で増えています。
しかし、多くの人は実家を相続する経験が初めてです。
何をすればいいのか分からず、不安を感じるのは当然のことです。
「すぐ売った方がいいのだろうか。」
「空き家のままでも大丈夫なのだろうか。」
「相続登記って何だろう。」
そんな疑問を抱えながらも、仕事や家庭があるため、何度も実家へ帰ることは簡単ではありません。
気がつけば数か月が過ぎ、実家は誰も住まない空き家になっていたという話も珍しくありません。
ですが、実家は放置すれば自然に解決するものではありません。
建物は人が住まなくなると急速に傷み始めます。
庭木は伸び、郵便受けにはチラシがたまり、近所から心配されることもあります。
さらに、固定資産税や管理費用は、住んでいなくてもかかり続けます。
つまり、実家は「思い出の場所」であると同時に、「管理しなければならない財産」に変わるのです。
とはいえ、慌てて結論を出す必要はありません。
実家を相続したからといって、すぐに売るか、貸すか、解体するかを決めなければならないわけではありません。
大切なのは、順番を間違えないことです。
まず家の状態を確認する。
名義を確認する。
相続するのか、相続放棄を考えるのかを検討する。
そのうえで、将来どう活用するかを考えればよいのです。
一つずつ整理していけば、決して難しいことではありません。
このシリーズでは、都会で暮らす子どもの立場から、実家を相続したあとに必要となる手続きや考え方を、順番に分かりやすく解説していきます。
相続登記、空き家管理、固定資産税、売却、賃貸、解体など、多くの人が実際に悩むテーマも取り上げる予定です。
法律の条文を並べるのではなく、「今、自分は何をすればいいのか」が分かる実践的なガイドを目指しています。
実家の相続は、多くの人にとって人生で何度も経験することではありません。
だからこそ、あらかじめ流れを知っておくだけでも、不安はずいぶん小さくなります。
このガイドが、これから実家を相続する人、あるいは将来その可能性がある人にとって、安心して一歩を踏み出すための道しるべになれば幸いです。
次回予告
次回は、「最初に確認したい実家の現状」について解説します。
実家へ行ったら、まず何を見ればよいのか。建物の状態や生活の痕跡、近隣との関係など、後の判断に大きく影響するポイントを順番に見ていきます。
