子どもは戻らない、家は残る

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地方の空き家が増えている理由の一つは、やはり「家を継ぐ人がいない」ということだと思います。

昔は、長男が家を継ぐという感覚がまだありました。

地元に残る。

親と同じ地域で暮らす。

家や土地を引き継ぐ。

もちろん全員ではありませんが、そういう流れが普通だった時代があります。

ですが今は違います。

子どもは進学や就職で都会へ出る。

そのまま結婚し、生活の基盤も都会側にできる。

地方へ戻る理由が少なくなる。

結果として、親だけが地元に残る形になります。


大きな家に、一人か二人で暮らす

私は配達の仕事で地方の住宅地を回っています。

そこで、

「この家、子どもは帰ってこないのだろうな」

と感じる家があります。

もちろん事情は外からではわかりません。

ですが、

高齢の親だけが住んでいる。

車が1台だけ停まっている。

庭の手入れが少しずつ減っている。

昔は家族向けだった大きな家。

そういう家を見ると、今の地方の現実を感じます。

昭和の時代には、子どもが独立しても、盆や正月には家族が集まったのでしょう。

孫の声がして、庭には車が何台も並ぶ。

そんな風景が普通だったのかもしれません。

ですが今は、子どもが遠方に住み、年に一度帰省するかどうかという家も珍しくありません。

家だけが昔のまま残り、暮らし方だけが変わってしまった。

そんな印象を受けます。


親は残したい。子どもは引き継げない。

難しいのは、親世代も、

「できれば子どもに残したい」

と思っていることです。

自分たちが苦労して建てた家です。

土地も守ってきた。

住宅ローンを返し終えた時には、大きな達成感もあったと思います。

簡単に処分する気持ちにはなれません。

ですが、子どもの側には子どもの生活があります。

都会で住宅ローンを抱えている人もいる。

仕事もある。

子育てもある。

地方へ戻りたい気持ちはあっても、現実には難しい。

そうなると、

「いつか帰るかもしれない」

と思いながら、結局そのまま時間だけが過ぎていく。

地方では、そういうケースがかなり多いように思います。


家が資産とは限らない時代

しかも最近は、家を相続しても「資産」にならない場合があります。

売れない。

貸せない。

解体費は高い。

固定資産税だけがかかる。

相続した側から見ると、

「どうしたらいいかわからない家」

になってしまうこともあるのです。

昔は、家を持つことが安心でした。

ですが今は、

家をどう維持するか。

誰に引き継ぐか。

あるいは、いつ手放すか。

そういうことまで考えなければならない時代になりました。


老後は「家をどう終わらせるか」でもある

配達中に見かける「売り家」の看板も、そういう流れの中にあるのかもしれません。

親が亡くなった。

施設へ入った。

子どもは戻らない。

だから、とりあえず売りに出す。

ですが地方では、買う人自体が少ない。

看板だけが長く立ったままになっている家もあります。

老後というのは、お金や健康の問題だけではないのだと思います。

「家をどう終わらせるか」

という問題でもある。

そして本当は、

家を終わらせることではなく、

家族が納得できる形で、家の役目を終えてもらうことなのかもしれません。

地方では、その現実が少しずつ表面に出てきているように感じます。


※この記事は、筆者がnoteに掲載した記事を加筆修正のうえ転載したものです。

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地方の空き家と老後

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